富山県砺波市・庄川地区とその周辺にあるおいしいものを、全国にお届けしているオンラインショップ「庄川温泉郷商店」。全国のみなさんに、もっとその土地にある物語を知ってほしくて、この「さとの暮らし」は生まれました。庄川の文化や暮らしにまつわる物語を、月に1回発信していきます。今回は、庄川地区で採掘された「金屋石」をご紹介します。
手彫りのノミ跡は、150余年の時を超えて。
庄川地区に来たら、庄川水記念公園の正面から対岸の山を眺めてください。黒くて大きな穴が目に留まると思います。その穴は、かつて石屋の職人さんが、金屋石の採掘を行っていた石切場の跡なのです。当時は電気も機械もないためすべて手彫り。先人たちが汗水流して働いた結果、明治時代には主要産業のひとつにまで発展しました。
金屋石とは、緑色凝灰岩という柔らかい石の一種で、青みがかった色合いが特徴。私たちが何の気なしに踏みしめている日本海側の大地は、緑色凝灰岩という柔らかい石で成り立っています。そして、その石がたまたま剥き出しになっている場所のひとつが、庄川合口ダムから小牧発電所対岸の南方一帯。長さ1,000mに渡るその箇所に、前述の石切場があるのです。
江戸時代には、すでにいい石だと評判だったのでしょう。金屋石は、金沢城の修復に用いられていたことが文献に残されています。しかし、1960年頃から採掘が行われなくなったため、石切場は木々で覆われていってしまいました。
見ることも、買うこともできます。
私たちが今、石切場を見ることができるのは、2012年に結成された「金屋石を語る会」が穴を覆う木々の伐採や草刈りを行ったから。以来、歴史的な大きな産業を後世に伝えることを目的に活動を展開。現在は14人が所属しています。
活動のひとつが「しめ繩づくり」。石切場に敬意を表するために、地元で採れた米の藁を手で編んでしめ縄を作り、毎年11月に掛け替えています。崖の上にある石切場まで安全に登って、ノミ跡を間近で見られるよう、約2年かけて階段を完成させたのも同会のメンバーです。ゆくゆくは気軽に訪れることができる、観光スポットとして広がっていきそうです。
さらに「収集」も実施。金屋石は調湿性に優れていることから、60年以上前の旧家の基礎石に多用されていました。これまでは解体時に捨てられていましたが、同会ではそれを収集し、コースターや一輪挿しなどに加工して提供しています。石屋を受け継ぐ職人さんにとっては、先代が切り出した金屋石に触れていることになるのかもしれません。庄川地区にお越しの際には、ロマンあふれる加工品を、そして石切場を、ぜひ体感してください。
この話を教えてくれた人
宮窪さんは宮窪建設の3代目、石森さんは石森石材の5代目。「次世代に金屋石を残していきたいです。遠い目標は、世界遺産です!」
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