2021.8.1

伝説の清水が、庄川地区を「水の街」に変えました。

 富山県砺波市・庄川地区とその周辺にあるおいしいものを、全国にお届けしているオンラインショップ「庄川温泉郷商店」。全国のみなさんに、もっとその土地にある物語を知ってほしくて、この「さとの暮らし」は生まれました。庄川の文化や暮らしにまつわる物語を、月に1回発信していきます。

 今回は、水のまち・庄川を象徴するスポット「瓜裂清水」をご紹介します。

恵みの水は、心と暮らしを潤して

 エジプト文明、インダス文明などの4大文明は、すべて川が母体となって文明が起こりました。水と暮らしは切っても切れない関係です。それは、庄川地区の人たちにとっても同じでした。

 今から約650年前、井波別院瑞泉寺を開いた綽如上人が、杉谷山という場所から布教に出かけていた時、上人の乗っている馬の蹄が地面を踏み抜いてしまいました。すると、そこから清水がこんこんと湧き出てくるではないですか。村人がその水で瓜を冷やそうとしたら、あまりの冷たさに割れてしまいました。そんな伝説を残す名所が「瓜裂清水」であり、庄川地区を代表する「水」なのです。

 瓜裂清水のある場所は、岩黒地区。河岸段丘の1段目と2番目の間から湧き出ています。そこに行けば、地元の人たちが作った水琴窟のキーンキーンという音が聞こえてきます。また、明治32年(1899)に、砺波地方を代表する石工・森川栄次郎さんが作ったと言われる守り神「不動明王」を見ることもできます。

 よくよく考えてみると、河岸段丘の一番高いところに水は流れていません。そうした場所にたっぷりの恵みをもたらした瓜裂清水は、地元の人たちにとってありがたい存在だったことでしょう。生活に必要なものを洗ったり、農業に使ったり。地域にしっかり密着していたことが、1985年4月に全国名水百選のひとつに認定された理由のひとつとされています。

ずっと、もっと、水と親しめる街へ

 全国名水百選の認定を機に、「庄川地区は、水の街なんだ」と地元の人たちの地域への認識が変わり、ひとつの祭りが生まれました。毎年8月の第1土・日曜に開催されている「庄川水まつり」がそれです。今は2日間の開催ですが、当時は8月の第1週から7日間続く「全国水の週間」に合わせて、1週間開催していたそうです。そして3年目からは庄川を舞台とした流木乗り選手権が、2017年からはウォータースライダーがスタートし、より水に親しめるイベントとして、多くの笑顔を育んでいます。

 水の街・庄川を象徴する「庄川水まつり」を生み出した瓜裂清水。しかし、2010年ごろから水勢が衰え、2019年秋には水がまったく出なくなりました。「どうしたものか」と地元の人たちが調べたところ、管に砂などが詰まっていることを発見。掘ってみると、清水の湧いている箇所が数箇所あることも分かりました。それらをひとつにまとめて井戸に流れる道筋を作ることで、水量が復活。以来、地元の人たちが頻繁に掃除を行っています。

 県内外から水を汲みに訪れる人の姿もちらほら。コーヒーを淹れるときに使ってみるのもいいですよ。水の街の清水で、いつもとは違った贅沢な風味を楽しめます。

2021年の「庄川水まつり」は10月24日(日)に開催予定。新しい企画を考えながら、水とのふれあいを続けていきます。

■この話を教えてくれた人

このお話をうかがったのは、東山見区自治振興会の会長を務める沖田孝夫さん。「清く正しく流れのごとく、水は人間の原点。私たちは、水とともに生きています」。


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