富山県砺波市・庄川地区とその周辺にあるおいしいものを、全国にお届けしているオンラインショップ「庄川温泉郷商店」。全国のみなさんに、もっとその土地にある物語を知ってほしくて、この「さとの暮らし」は生まれました。庄川の文化や暮らしにまつわる物語を、月に1回発信していきます。今回は、庄川地区の秋の旬「庄川ゆず」をご紹介します。
地元の人たちのおふくろの味は、大抵ゆず味噌です
店頭に並ぶ野菜や果物を選ぶ時には、おいしそうなモノとして見てしまいがちですよね。ですが、庄川地区の秋の旬「庄川ゆず」は、単なる「モノ」ではないのです。
この丸くて黄色い柑橘類は、弘法大師によって庄川地区にもたらされたと言われるほど長い歴史があり、金屋の岩黒地区では古くから庭木としてゆずを栽培してきました。今も盛んに作られているのは、気象条件が生育に最適だからです。ゆずは霜に弱く、それによって葉が落ちると実がつきません。しかし、霜をうまく阻止しているのが、「庄川嵐」という風。生育に影響を与える3〜4月の夜から朝方にかけて吹くため、霜がつかないだけでなく、木も痛ませません。この風や雪に耐えるため、肌が凸凹と荒くて肉厚、酸味の強い庄川ゆずになるのです。
かつては岩黒地区のみで作られていましたが、転機を迎えたのは昭和45年(1970)。減反政策によって、農協の人たちが各地区へゆずの普及を促しました。その結果、青島地区や雄神地区でも作られるようになったのです。
庄川地区に広く浸透したからか、今も自宅でゆず味噌を作っている家庭がたくさんあります。おでんの具に添えたり、ご飯に直接かけたり、里芋の田楽として使ったり。家によって異なる味つけが、代々受け継がれています。学校給食でも、鯖のゆず味噌などが登場するんですよ。
もっと笑顔を届けたくて、レシピをつけています
昭和56年(1981)には、庄川地区が県の「特産の里」に指定。これを機に、栽培面積の拡大が進み、金屋ゆず生産組合が設立されました。今、同組合の組合員は39名。約5.1haで計1,000本ほどのゆずの木を育てています。
その木には、トゲがいっぱい生えているので、皆さん四苦八苦。収穫は手作業で行っていますが、素手で触ると傷だらけになり、軍手をしていても刺さってしまうので、革の手袋が必需品です。さらに、収穫期間は10月下旬〜11月末頃と短く、収穫後も短期間に生長を阻害する徒長枝(とちょうし)を剪定し、雪吊りをしなければいけません。
組合員の人たちがトゲにめげることなく品質を追求し、JAが厳しく管理しているのは、毎年11月中旬に開催される「ゆずまつり」のためでもあります。近年は、開催期間2日間で延べ2万もの来場者が訪れる一大イベント。同組合の人にとっては、ゆず目当てで訪れ、笑顔で購入する人たちに出会えます。生産者冥利につきる2日間といえるでしょう。
だから、単にゆずを売るイベントではありません。おいしい食べ方を伝えるために、ゆず味噌やゆずマーマレードなどのレシピを同封するなど、購入者の心に寄り添った販売を実施。その思いやりは、笑顔という形で生産者に返ってきます。だから、「来年もおいしいゆずを作ろう」「もっとおいしいレシピを考えよう」と、幸せの循環が育まれているのですね。
この話を教えてくれた人
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