2021.10.1

獅子舞が、新婚さんの家でおもてなしを受けます。

 富山県砺波市・庄川地区とその周辺にあるおいしいものを、全国にお届けしているオンラインショップ「庄川温泉郷商店」。全国のみなさんに、もっとその土地にある物語を知ってほしくて、この「さとの暮らし」は生まれました。庄川の文化や暮らしにまつわる物語を、月に1回発信していきます。今回は、庄川地区に伝わる「獅子舞」をご紹介します。

みんなの厄を払い、ともに収穫を喜ぶお祭り

 男性が獅子頭をかぶって舞う「獅子舞」。まだ幼い頃、生まれて初めて見たときは結構怖かったのですが、ある程度大きくなり、神様のお使いで厄を払う存在だと知ってからは、訪問が楽しみになったものです。

 富山県は獅子舞の盛んな地域で、庄川地区もそのひとつ。胴幕の中に獅子頭から尾まで7〜8人の大人が入る「砺波獅子(百足獅子)」をはじめ、胴幕の中に前足と後足の2人が入って曲乗りなどをする「ねんごろ獅子(二人立ち獅子)」という珍しいものも残されています。

 なかでも、「砺波獅子」を今に伝える青島地区は、春と秋の年に2回開催している珍しいところ。地区内は上村と下村の2つに分かれ、上村は「青島青年信義会」、下村は「至誠会」と違う組織が運営していますが、どちらも青島神明宮を祀り、春は五穀豊穣や厄除け祈願のため、秋は収穫を祝うために獅子舞を奉納しています。

 上村で特に盛んなのは、秋祭り。村内にある400戸以上の家々や企業などを朝8時から夜10時過ぎまで1軒ずつまわるのです。そして最後に訪れるのが、同会に所属している新婚会員の自宅。その家では、祝儀を包んだり、酒を振舞ったりして、獅子舞をもてなします。場が盛り上がったところで獅子舞が舞い、家中がめでたい雰囲気に。ちなみに、秋祭りで400戸以上をすべてまわるのは困難なため、残りは春祭りの時にまわるのだそうです。

人を大切にする心を、獅子舞が伝えています

 上村には、角がなく睨みのきいた女獅子(めじし)という獅子頭2頭が伝承されています。その頭を操る人を「頭振り」といい、左手を頭の顎に入れて持ち、右手は添えるのが、うまく操るコツ。肩に力が入りすぎると、口が開いた「あくび獅子」になってしまうのだそうです。何事においても力の加減は大事なのですね。

 お祭りで伝統の舞を披露するために、頭の振り方をはじめ、笛や太鼓などの練習は欠かせません。約1ヶ月前から地元の公民館などで始まります。練習は、職場とはまた違う世界で社会を知ることができる「生きた学習の場」。苦労などを共に分かち合うことで、獅子舞に携わる人同士が絆を深めていきます。そして、その人たち自身が本番で舞いを楽しむことで、見る人たちを楽しませ、地域全体に明るい気持ちが広がっていきます。同じ地域に住む一人ひとりを大切にする心も、獅子舞という伝統行事とともに受け継がれているのでしょう。

かつては15歳以上の長男しか胴幕に入れず、頭振りにもなれませんでしたが、今は生まれ順や性別にとらわれていません。少子化の問題を解消するためでもありますが、どんどん「開けた祭り」になっています。

この話を教えてくれた人

このお話にご協力いただいた方は、長年にわたり頭振りを務めた瀬川和夫さん。砺波・庄川まちづくり協議会に所属し、「若者の館」の管理を務めるほか、青島神明宮の総代など多方面で活躍中。

メールマガジンでは、特集「さとの暮らし」の最新記事のほか、オンラインショップ「庄川温泉郷商店」の期間限定・おすすめ商品の情報をお届けいたします。配信をご希望の方は、登録フォーム(無料)よりお申し込みください。